摘心作業/ピンチはチャンス!

ある日ふと思ったんです。
「今の時期って梨農家さんは何をしているんだろう……」

摘果作業は遅くても5月中で終わる、と先月の取材で伺っていました。
「もしかして収穫まで悠々自適!?」
そんなことを親しい農家さんに話してみると、「今(6月)もやることはたくさんあるよ。人によっては怒られちゃうよ」と言われてしまいました(汗)

続けて「今は『ピンチ』で忙しいよ」と。
「???(生活厳しいってこと?)」
ちょっと何言ってるかわからないので(失礼)、とりあえず畑に行ってみることにしました!

摘心作業で日当たり改善

6月の梨畑は、5月上旬の摘果の頃と比べて果実が大きくなっていましたが、枝葉もかなり茂っています。
枝葉が茂ると光合成が盛んにおこなわれるようになり、葉の葉緑体で梨の生長に必要な栄養分がつくられます(理科で勉強しましたね!)。
一方で過度に枝葉が茂ると、影が出来てしまって逆に光合成を妨げたり、風通しが悪くなって病害虫が発生しやすくなったりするそうです。

その際におこなわれるのが「ピンチ」という作業。
ピンチ(pinch)は英語では「つまむ、摘み取る、挟む」といった意味です。
(「危機に瀕する」というのは慣用句「in a pinch」から来た和製英語だそうです)
今春伸び出した新しい枝を、適切な位置からハサミで摘み取ることで、木全体にまんべんなく日光が差し込むようにしてあげます。

ピンチをおこなっていない木は、画像のように日光が木の下に差し込んでおらず、薄暗い印象になるそうです。

反対にピンチをした木の下は光が差し込んでいるのがわかります。

ピンチをすれば光合成が効率よくおこなわれるだけでなく、余分な枝に使われていた養分が実に流れるようにもなるので、果実の品質にもプラスになります。
なるほど、ピンチはチャンスなんですね!

6月の作業でその人のこだわりが出る

摘心以外にもやることはたくさん。
かおりや新高の袋掛け、先端の枝の固定、来年果実を成らせる枝の誘引、水やり、除草、土の病気の殺菌……挙げればキリがありません。
「全部完璧にこなすのはかなり難しい。摘果まで絶対やらなければだめだけど、今の作業は極端な話やらなくても一応果実はできる。ただこの時期にどこまで手をかけるかで、(果実品質や木の生育の)差が出てくるよね」

園主さんのこだわりが出てくるのが6月の管理作業とのこと、なかなか知られていない話です(悠々自適なんて言っちゃってスイマセン…)。
また、園の状況によって管理方法が異なるので、一概に「これをやればいい」というのが無いのも難しいとのこと。
まさにプロフェッショナルの世界です。

さて気温が高くなって夏を感じると、収穫の足音が聞こえてます。
関東はまだ梅雨入りしていませんが、今年は昨年のような長梅雨にならないことを祈るばかりです
日が十分に差さないと、光合成でたくさん養分が作れませんからね!
今回勉強したことの一つです(笑)。

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